子どもの「問題解決能力」 「言葉が考える力を育てる」理由を発達心理学者が解説 

【今こそ学力観のアップデートをするとき】本当の学びとは何か#2「思考力を育む言葉の力」

言葉があるから、人は思考することができるのです。  写真:アフロ

「言葉の力」は、「思考力」「問題解決能力」に直結します。

日本を代表する発達心理学者である今井むつみ先生は、これらを「切っても切れない関係」と表します。

言葉はコミュニケーションを取るだけのものでなく、私たちが何かを考えるための基礎となるツールであり、「言葉の力」を育むことがさまざまな概念の理解、さらには「思考力」や「問題解決能力」につながるといいます。

言葉と思考、問題解決する力は、どのように関連しているのでしょうか。

第2回は、「思考力」や「問題解決能力」を育む「言葉の力」の重要性、幼児期の発語と「言葉の力」の関係などについてうかがいます。

※全6回の第2回

今井むつみ
慶應義塾大学環境情報学部教授。認知科学、特に認知心理学、発達心理学、言語心理学などを専門に研究。言語に関する研究から教育や学びにも関心を持ち、近年は一般読者向け書籍の執筆、講演活動にも力を入れている。また、国境を越えて学びを考えるコミュニティABLE(Agents for Bridging Learning and Education)をつくり、ワークショップなどを開催している。

言葉の力が「思考力」を育む

今井先生は、「言葉の力」の重要性を次のように語ります。

「言葉は、ただ会話やコミュニケーションを可能にしているだけではありません。私たちは、言葉を使って考えます。つまり、言葉は『思考するための道具』なんですね。

言葉が可能にすることはいろいろありますが、例えば、子どもは言葉によって、目に見えない抽象的な概念を理解できるようになります。時間は目には見えませんが、言葉を使って可視化することで、認識することができます。

また、『数の概念』も抽象的な概念のひとつです。『いち』『に』『さん』という言葉があることで、数と量は違うということがわかるようになります。さらには、『大きい』『小さい』、『前』『後』『右』『左』などの言葉から、ある視点や枠組みの中での関係性や、相対的なものの見方を学びます」(今井先生)

そして、言葉が育む最も重要な力が、「考える力」だと今井先生はいいます。

#1でも解説があったように、子どもが言葉を覚えるとき、常に分析と推測を繰り返していました。これこそが「考える力」「思考力」です

「言葉を覚えるには必ず『思考力』を使っていますから、子どもは元々考える力を持っているわけですが、それをどれだけ伸ばしていけるかは、『語彙の習得』にかかっています。言葉を覚えることを通して、『思考力』も成長させることができるのです。

『言葉の力』と『思考力』は連動していて、一方が伸びればもう一方も伸びていきます。例えるなら、右足と左足のような関係です。歩くとき、右足がでれば左足も勝手に前へ出るように、言葉の力が発達すれば、思考力も自然と磨かれるのです」(今井先生)

問題解決能力は「推論」がキモ

「思考力」をもう少し具体的な言葉に置き換えると、「知識を使って推論し、問題解決する力」といえます。

「『推論』とは、自分が持っている知識を使って、知らないことに対応したり、応用したりすることです。#1でも、子どもが推論して言葉を習得する様子を説明しました。ここでは、次のようなわかりやすい例を挙げてみます。

子どもがすでに知っている『りんご』と、名前の知らない果物の両方があるときに、名前の知らない果物のことを大人が『○○を取って』と特定して頼んだとします。そのとき子どもは、『こっちはりんごだ。りんごを取ってとはいわれなかったから、りんごじゃないほうが○○だな』と推論します。そして、『この果物は、○○という名前だよ』と教えられなくても、新しい果物の名前を覚えるのです。

また、すべての動物を『ワンワン』と呼んでいた子どもが、ウサギを見てその名前を知ったとき、『ワンワン』からウサギを除く作業をしてその範囲を狭めます。これも推論の応用です。そのほかにも、関係性が同じであることに注目して行う推論(アナロジー)や、共通するパターンを新しい状況に応用する推論など、いくつかの種類があります。

子どもが言葉を覚えるというのは、『推論を組み合わせて問題を解決すること』の積み重ねともいえます」(今井先生)

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