なんてかっこいいんだ! 25年ぶりに奄美大島で出会ったアマミノコギリクワガタにうっとり

【ちょっとマニアな季節の生きもの】昆虫研究家・伊藤弥寿彦先生が見つけた生きもののふしぎ

昆虫研究家:伊藤 弥寿彦

昆虫の島・奄美大島で昆虫観察の旅!

アマミノコギリクワガタ
奄美大島は、九州の鹿児島から約380キロ、沖縄本島から約340キロと九州~沖縄間のほぼ中間に位置する亜熱帯の島です。アマミノクロウサギやルリカケスなど世界中でここにしかいない生きものが何百種類も生息している素晴らしい島。昆虫も奄美大島特有の固有種が数えられないほどいます。

ミカン畑に着いて早々に……!

オオトモエ
一昨年の夏、25年ぶりに奄美大島へ行く機会があって、いろいろな動植物に出会いました。その際、印象的だったのはミカン畑です。島に着いたその日の夜に、地元に住むクワガタ好きの方に、彼の知り合いが持っているミカン畑に連れて行ってもらいました。奄美のミカンは、ボンカンとタンカンが有名です。

共に冬にとれますが、とても甘くて本当に美味しいミカンです。連れて行かれたのはタンカン畑。タンカンの樹液にクワガタがいるというのです。毒蛇のハブに注意をはらいつつ、山の中の真っ暗闇のタンカン畑にヘッドランプを付けてお邪魔すると、すぐに大きなガが目に飛び込んできました。オオトモエです。盛んに樹液を吸っています。
アマミノコギリクワガタ
そのすぐそばに……いました、いました。アマミノコギリクワガタです。大きなオスは8センチにもなる、巨大なノコギリクワガタで、25年ぶりに見たその格好良さに思わず見とれてしまいました。次の木にいたのは、巨大なスジブトヒラタクワガタ。奄美大島特産のクワガタです。
スジブトヒラタクワガタ
普通のヒラタクワガタと違って、上ばねがつや消しで筋がついている変わったクワガタ。さらに珍しいアマミシカクワガタまで発見しました。シカクワガタは保護の対象になっていて採集することはできません。世界遺産になった奄美大島では保護地域が指定され、その中の生きものの採集はできなくなりました。
アマミシカクワガタ
採ってはいけない昆虫もいくつか決められてしまったので注意が必要なのです。それにしてもタンカンの樹液にこんなに虫が集まっているとは知りませんでした。
昼間のタンカン畑。
翌日の朝、山の中で昆虫を研究している大学院生のIさんに出会いました。彼の研究対象は、ケシキスイという甲虫だといいます。そのケシキスイは大きさわずか2ミリほど。樹液に集まる虫ですが、なかなか樹液が見つからなくて困っている、とのことでした。

それならば、と昨晩のタンカン畑へ、もう一度立ち入る許可をもらって行ってみました。昼間のタンカン畑は夜とは全く様相が違っていました。樹液にはガではなく、ルリタテハやスミナガシなどのチョウが集まっています。樹液をなめてみました。甘い! 本州でカブトムシやクワガタが集まるクヌギやコナラの樹液よりずっと甘くて、これならいろんな虫がやってくるわけだ、と思いました。
オキナワチビオニケシキスイ
Iさんが探していたケシキスイ(オキナワチビオニケシキスイ)は、予想通りたくさん見つかりました。Iさんは大興奮!

夜、たくさんいたクワガタの姿はほとんど消え(一頭だけスジブトヒラタクワガタのメスがいました)、代わりにハナムグリがたくさん集まっていました。そのほとんどがリュウキュウオオハナムグリ! 驚きました。3種類いる奄美大島のハナムグリの中では一番珍しい種類だったのです。同じ場所でも時間帯によって見つかる虫が全然異なることがよくわかりました。
リュウキュウオオハナムグリ
オオシマアオハナムグリ
普段見つからない虫も、実はいる所にはたくさんいるのです。そのいる所(ポイント)を探し出すのも昆虫採集や観察や醍醐味です。野山へでかけたら、虫の気持ちになって探すのが大事なんですね(笑)。
昼間のスジブトヒラタクワガタ(メス)

写真提供/伊藤弥寿彦

いとう やすひこ

伊藤 弥寿彦

Ito Yasuhiko
自然番組ディレクター・昆虫研究家

1963年東京都生まれ。学習院、ミネソタ州立大学(動物学)を経て、東海大学大学院で海洋生物を研究。20年以上にわたり自然番組ディレクタ...

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